昭和30~40年代にかけて日本人の死因のダントツ1位であった脳卒中が今は4位になっています。
減少の理由はいくつかあげることができます。
①降圧剤の開発により血圧のコントロールが上手くできるようになったこと
②冷蔵庫の普及、運送手段の発展、整備により食品の保存方法が変わり食品に使用する食塩の量が減ったこと。
③行政、マスコミによる啓蒙がすすみ高血圧に国民が注意するようになったこと。
④CTなどの画像検査が開発されてすぐに診断・治療が行なえるようになったこと。
⑤住環境が変わり気温の変動による影響を受けなくなったこと。
この中で、⑤の住環境の変化という視点は、若い世代の人にはピンとこないかもしれません。
昭和30~40年代には、一般家庭のお風呂は銭湯にいくか、自宅であれば「五右衛門風呂」でした。
五右衛門風呂とは、大きな鉄釜に水を満たし薪を燃やし湯を温めて入る風呂です。
すぐに熱くなるけど、すぐに冷めるので温度調整が難しい風呂でした。
また風呂場は、母屋と少し離れたところにあるのが普通でした。
そのため冬など寒風の中風呂場に行き、熱い風呂に入り、そして再び寒風に吹かれて母屋に帰りました。
この温度差が身体に影響を与えます。
寒い脱衣所で裸になると、身体から熱が奪われないように毛細血管が収縮し、血圧が上昇します。
熱い風呂に入る時には、交感神経が緊張するのでさらに血圧は上昇します。
そして浴槽内で身体が温まると血管が拡張して血圧は急に下降します。
浴槽からでると水圧がなくなり、さらに血圧が低下します。
寒い脱衣所で再び身体が冷えると血圧の上昇が起こります。
この温度差が血圧の短時間での変動につながり血管が破裂する脳出血の原因になっていました。
50年前には、風呂場でどれほど多くの方が 倒れたことでしょうか。
現在でも住環境が改善して屋内に風呂があり、一定の温度で保たれているにかかわらず冬場には風呂場で1万人以上がなくなります。
高齢者増え、ちょっとした血圧の変動でも脳卒中の原因になるからです。
風呂場で脳卒中で倒れないための注意点を以下にあげます。
入浴時の注意点は、脱衣所や浴室を暖房するなどして暖かくしておくこと。
暖房がない場合は、服を脱ぐ前に浴槽のふたを開けたり、浴室の壁や床に温かいシャワーをかけるなどして浴室を暖めておくこと。 湯船に入る前に、手足にかけ湯をして徐々に身体を温め、ぬるめの湯にはいること。
いきなり肩までつからず、足からゆっくりつかり徐々に肩までつかること。
風呂から出る際も急に立ち上がらずにゆっくりと立ち上がり湯船からでること。
飲酒後の入浴はさけること。
入浴前後には、コップ1杯の水分を補充すること。
こんな注意をすると高齢者でも安全に入浴を楽しむことができます。
住環境が健康に影響するというのはあまり気がつかない点ですが大事だと思います。