胃がんの原因・・・ピロリ感染胃炎

胃がんで亡くなられる方は年間5万人です。
胃がん死亡者数は、ここ数十年ほとんど変わっていません。
高齢者が増え肺がん、大腸がんが増加しているのに増えてないということは、実質的に減少していると考えてよいかもしれません。

なんで増えてないかという理由は、これまでは早期検診の効果だといわれてきました。
本当でしょうか? 検診で診断される胃がんの数は、全体の5.5%しかありません。
この数字をみると検診も役に立っているかもしれませんが、それほど影響していません。
実は、別の理由が関係していることがわかってきました。
その理由は、ピロリ菌です。

1990年代に胃がんの原因として、ピロリ菌が関与していることがわかりました。
ピロリ菌感染により胃の慢性炎症が進みます。
炎症持続することでがんが発症します。
胃がんは、日本、韓国、中国など東アジアで多く、欧米では少ない病気です。
その理由も、欧米にくらべ東アジアの人々にピロリ菌感染率が高いからです。
日本人の胃がんの98%は、ピロリ菌が原因だといわれています。

ピロリ菌は、胃酸の分泌がまだ不十分な子供の時に感染します。
大人になってから感染することはまれです。
ピロリ菌は殺菌消毒がされていない井戸水などにいます。
ですから上下水道が整っていない時代にピロリ菌感染が多かったわけです。

日本では昭和30年代に上下水道がどの地域での整備されました。
そのためピロリ菌感染者の数は、60代以上では、60~70%と高いのですが50代以下では30%以下となっています。
これが胃がん発症率と死亡者数が増えていない理由です。
今後、胃がんを減らすには、ピロリ菌を除菌してしまえばよいでしょう。

いったんがん細胞ができてしまうといくらピロリ菌を除菌してもがんそのものを治すことはできません。
50代以降に検査により胃がんと診断される方の数が増えます。 目に見えたがんになるまで、おそらく10~20年の時間がかかります。
ということは、30代くらいにはピロリ菌による炎症によりがん細胞ができてしまっていると考えられます。
胃がんを予防するには、20代よりも早い年齢でピロリ菌を除菌することが必要でしょう。
10代ではわずか5%の感染率です。

子宮頚がんワクチンなどと同じように中学生の時にピロリ菌検査を義務づけることが考えられています。
除菌まで公的費用で行えば親切なのでしょうが、費用の問題や副作用問題があります。
除菌するかしないかは、インフルエンザワクチン接種のように本人家族の判断にまかせるようにしたらよいのではないでしょうか。
ピロリ菌を早期に検査・除菌することで胃がんを予防できる時代となりました。
20代、30代の方でも検査を受けて除菌されることをお勧めします。

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