高齢になり食事が食べられなくなることがあります。
医学的な言葉でいうと摂食・嚥下障害と呼ばれるものです。
摂食・嚥下障害の3大原因は、脳卒中、認知症、薬です。
認知機能の低下すると徐々に食事が食べられなくなってくる方が増えます。低体重と認知機能低下は相互に関連しています。
すなわち認知機能が低下すると食べられなくなり、低栄養状態となると認知機能低下も進行します。
ですからできるだけ栄養状態を維持することが大事なことです。
認知機能が低下して食事が食べられなくなった時に摂食・嚥下機能のどこに問題があるか考えて対応する必要があります。
摂食・嚥下機能は以下の5期に分けられます。
①先行期;目で見て食べ物を認識する時期
②準備期;食べ物を口から入れ、そしゃくする時期
③口腔期;舌やほほを使い、食べ物を口の奥からのどへ送る時期
④咽頭期;脳にある嚥下中枢からの指令で食べ物を食道に送りこむ時期
⑤食道期;食べ物を胃へ送り込む時期
認知機能低下した高齢者では、どの時期の障害も起こりえます。
しかし対応は、けっして一律ではなく、障害に応じたやり方をします。
①の先行期でみられる障害⇒対処法
出されたものを食べ物として認識できない場合⇒「ごはんですよ」と声をかけて食事をうながす。
食器の使い方がわからず(できず)摂食行動をとれない⇒食事を介助して食べさせる。
抑うつや無関心(アパシー)で食欲なし⇒食欲を増す抗うつ剤などを処方
傾眠がちで食事の際に寝ている⇒睡眠剤を使用していたら減量または中止
②の準備期でみられる障害⇒対処法
よく噛まずの丸呑みする⇒食形態をソフト食やきざみ食にする。入れ歯を合うように歯科治療する。
③の口腔期でみられる障害⇒対処法
飲み込まずに口の中いっぱいとなる⇒「ゴクリとして」と声をかけ嚥下をうながすようにする。
④~⑤の咽頭期、食道期にみられる障害⇒対処法
飲み込み時にむせる⇒食べるときの姿勢を前かがみにさせる。
むせずに誤嚥する⇒咳嗽反射を誘発する薬剤(ACE阻害薬、シロスタゾール)を処方する。
飲み込みが悪い⇒嚥下訓練(温熱刺激法や口腔内刺激など口腔ケア)を行う。
このように摂食・嚥下障害のタイプに応じて対処法を考えてゆく必要があります。
私が嚥下内視鏡を行って思うことは高齢者は、かなり嚥下反射遅延を認めるということです。
食事をしている姿をみているだけでは、気がつかないことが嚥下内視鏡を行うとわかることがあります。
ぜひ飲み込みが悪いなとか食事の際にむせることがあるという方に嚥下内視鏡検査を一度おこなってください。